CGF・AFGセミナー 20221023 萩原 大子
2022年11月11日
自家血液製剤
PRP:Platelet-Rich Plasma
PRGF:Plasma Rich in Growth Factors
PRF:Platelet-Rich Fibrin
CGF:Concentrated Growth Factors
AFG:Autologeous Fibrinogen Glue
PRPが歯科で普及しない原因
1、骨再生効果への疑問
2、作製過程が煩雑
3、生物学的安全性への懸念
The coagulation cascade(凝固系)
第Ⅻ因子が活性化される→第Ⅺ因子が活性化→第Ⅸ因子活性化→第Ⅹ因子活性化
→第Ⅱ因子活性化
→第Ⅰ因子活性化
(フィブリノーゲンがトロンビンとCa2+で活性化されフィブリンへ)
の順で連鎖反応が起こる
凝固経路の時間:約10分
歴史
1998 PRP
多血小板血漿
1999 PRGF(Plasma Rich in Growth Factors)
スペインのBTI(Biotechnology Institute)社のEduardo Anitua博士により研究開発された
一回の遠心でピペットで採れるようにした
PRPとの違い:一回の遠心で出来る、トロンビンを必要としない
2001 PRF(Platelet-Rich Fibrin )
&2006 多血小板フィブリン
2010 CGF(Concentrated Growth Factors)
遠心分離の回転数をコントロールし、最適な条件で得られる、より上部なPRFのこと。
自己血液フィブリンゲル。(イタリア、Dr.Sacco)
特徴:抗凝固剤、CaCl2、トロンビン等添加物を一切使用しない
一回の遠心(13分)で完了
PRP vs CGF
PRP
○2回の遠心→面倒である
○ランニングコストが高い
抗凝固剤、CaCl2、トロンビンの使用
○生物学的安全性に疑問あり
他人或いは牛由来トロンビン
CGF
○1回の遠心→簡単
○ランニングコストが低い
抗凝固剤、CaCl2、トロンビン等添加物を
一切使用しない
○生物学的安全性→安心
異体異種由来製剤を使用しない
交差感染リスクがない
再生医療等安全性確保法(平成25年5月〜)
PRP,PRF,CGFなどの自家血液製剤を用いる医療機関は、再生医療等安全性確保法により「特定細胞加工物製造」の
手続きが必要
CGF作製時の注意点
○血液はガラス管のシリカと反応し、内因性経路の第Ⅻ因子が活性化され、 凝固系の連鎖反応が起こる
プラスチック管単体では血液は凝固しない
(現在はガラス管が販売中止となり、プラスチック管の中にシリカを入れたものを使用)
○採血から遠心までの時間を極力素早くする
遅いと凝固してしまいフィブリンが赤血球と一緒に沈殿してしまう
→遠心をかけてもCGFが出来ない
採血針は細過ぎないもの(21G)を推奨(採血時間の短縮)
理想的には採血から2分以内に遠心にかける
Plasma(血漿)とSerum(血清)
Plasma(血漿)
作成過程 抗凝固剤を入れてできた上清
Fibrinogen 有り
Activator(Thrombin+CaCl2) 凝固する(Activator(Thrombin+CaCl2)でFibrinogenがFibrinになり凝固)
Serum(血清)
作成過程 抗凝固剤を入れずにできた上清
Fibrinogen なし
Activator(Thrombin+CaCl2) 凝固しない
Plasma(血漿)ー Fibrinogen = Serum(血清)
CGFの利用法
1、骨移植材と混ぜる →AFG technique
2、CGF塊を利用
3、CGFを膜にして利用
Autologous Fibrinogen Glue(AFG)Technique (黄炳珍先生が命名)
AFG・・・プラスチック製採血管にできた上清部分(まだ凝固されていない液体状態)がAFG
つまり、AFGは抗凝固剤が入っていない自己血漿のこと
自然状態にもっとも近い血漿
○採血:抗凝固剤が入ってないプラスチック製採血管に採血
○遠心:CGF cycleにて遠心する
○ガラス製容器に骨移植材を入れ、その上にAFGを入れてかき混ぜる
約10分でCGFと骨移植材がうまく混ざり合ったゲル状の骨移植材が完成
○自己トロンビン(CGFの上清)を入れると凝固過程が短縮できる
プラスチック製容器であっても時間が経つと凝固するので注意
補填材に入れる時はAFGをたっぷり入れる
○AFGは冷蔵保存・冷凍保存が可能
○AFGと混ぜると補填材を粘土状にできる
骨補填材に賦形性をもたせることが出来る
→操作性が良く、骨補填材が維持しやすい
チタンメッシュ等がなくてもハウジングできる
骨補填剤を塊状にできるため、Sinus LiftではSinusに落ちにくい
(念の為CGFを置いてからの方が良い)
血液凝固と温度の関係
血液凝固反応は温度に非常に敏感
37℃ 5min
25℃ 10min 夏の室温
20℃ 20min 冬の室温
15℃ 60min
10℃ 凝固しない
→冬は室温で1回遠心でCGFができない事がある
対策:もう1回遠心をかける
室温を上げる
遠心する前に温水を入れた紙コップに2分くらい入れてから遠心をかける
(温水の温度は42℃くらい、それ以上だとタンパク変性する)
自己Fibrin = CGF
自己Fibrinogen = AFG
自己Thrombin = supernatant of CGF
CGFの臨床応用
骨移植材と混合して使用(GBR、Sinus graft)
骨移植材の代わりに使用(Sinus graft)
生物膜として使用(GBR膜、open membrane technique)
その他、CGFは止血、疼痛コントロール、感染防止などに使用可能(ドナーサイト、ドライソケット予防など)
→FGGのドナーサイトに貼ると疼痛が減り、早く治癒する
抜歯窩にCGF入れると疼痛が減り、ドライソケット予防にもなる歯周治療へ可能性
Sinus Lift/Socket Liftへの応用
骨補填材を入れないSinus Lift
何も入れない あるいはコラーゲンやCGFなどのスペース確保の足場材のみ入れる
骨に囲まれたスペースのため骨が出来る
シュナイダー膜を骨膜ごと剥がすため、骨芽細胞により骨ができる
骨補填材の感染のリスクを回避できる
治療期間を短縮できる
Hydrodynamic PISE(PISE with internal irrigation):HPISE
ソケットからピエゾ等の水圧で内部注水することでシュナイダー膜が上がる(20秒くらいで持ち上がる)
シュナイダー膜の穿孔を防げるとともに、スペースの確保が出来る(シュナイダー膜を大きく上げることができる)
パスカル原理で広範囲に広くシュナイダー膜が持ち上がる
実際の臨床では骨高径4〜5mm程度ある症例に応用
骨高径が薄い場合は骨補填材を使用する