サイナスリフトの勘所
サイナスリフトレポート (MALOセミナーより) 2022/7//11 萩原 大子
【上顎骨・上顎洞の解剖】
隔壁
34%に隔壁がある
隔壁の70%が内側壁を支点として放射状に走行
後上歯槽動脈
歯槽頂から動脈までの平均距離16.4mm(±3.5mm) (12.9~19.9mm)
80% 歯槽頂から15mm以上
20%歯槽頂から15mm未満
【基本的な診査・診断】
・臨在歯の歯周疾患の確認:
動揺・ポケットの深さなどを検査し、手術後の感染リスクを確認する
・臨在歯根尖が上顎洞に接しているか、近接しているかの確認:
洞粘膜剥離時に根尖部位の神経・血管を損傷することがある
・残存歯の根尖病巣、歯根嚢胞が上顎洞に接しているか確認:
手術前に根管治療または摘出が必要か検討する
上顎洞関連
・粘液貯留嚢胞
①そのまま手術
②同時に穿刺吸引または摘出
③術前に内視鏡下副鼻腔手術にて嚢胞摘出術or開放術(耳鼻科)
上顎洞炎:
歯性であれば術前に原因歯の処置(根管治療、抜歯など)
自然口が閉鎖している状況で手術を行わない
アレルギー性鼻炎:
アレルギーの時期を回避する
Supra Crestal Tissue Attachmentなどを考慮した既存骨量による上顎臼歯部治療指針
Lateral Approachにおける既存骨量とインプラント生存率
既存骨量4mmで生存率96%
【Lateral approachの術式】
①局所麻酔・伝達麻酔
・上顎神経の枝・・・後上歯槽枝、大口蓋神経、鼻口蓋神経
・眼窩下神経の歯槽枝
・眼神経の枝・・・前篩骨神経
1、眼窩下孔伝達麻酔
2、切歯孔伝達麻酔
3、大口蓋孔伝達麻酔
4、上顎結節伝達麻酔(歯槽孔)
5、眼窩下神経中上歯槽枝の麻酔
&ザックライン
②切開・骨膜下剥離
A、遠心縦切開・・・ZACライン上もしくはやや遠心
B、歯槽頂切開・・・やや口蓋側寄り
C、近心縦切開
骨膜下剥離
・上縁が犬歯窩
(眼窩下孔の明示は原則的に不要)
・後縁がZACライン
・前縁が上顎洞前方端より近心
③側方部骨窓(Lateral Window)の形成
骨窓設置のポイント
・上顎洞がグレーに透けて見える
・ZACライン上は骨が熱いので避け、前方に骨窓を設置
・歯槽頂から5mm以上離す
・近心縦切開から5mm以上離す
・後上歯槽動脈が確認できた場合、できればWindowから避ける
(歯槽頂から平均16.4mm)
・埋入予定のインプラント長を考慮し、上端を決定
・なるべく洞前方端に骨窓近心端、洞最低部に骨窓下端を設定する
Lateral Window形成・除去時の注意点
→メンブレンの穿孔・後上歯槽動脈の損傷
④上顎洞粘膜剥離
上顎洞粘膜剥離の順番:
後方→下方→後方→下方→前方→下方→鼻腔側壁→後方端
剥離子をしっかりと骨面に垂直に当てる
⑤骨補填材の転入
セメントスパチュラにてメンブレンを挙上保持
骨補填材を遠心→近心→鼻腔側→入口に填入
スパチュラを除去し、入口表層に骨補填材を置く
⑥インプラント同時埋入の場合、埋入
⑦縫合
MALOクリニックではB→A→Cの順で単純縫合する
【上顎洞粘膜穿孔への対応】
①小さな穿孔
直径8mm未満の穿孔
→パッチ法
バイオガイドなどの吸収性メンブレンを使用
ルーツェを用いるとやりやすい
L-PRFを用いる方法もある(成績良好)
②大きな穿孔
(直径8mm<直径12mm)
パッチ法+6-0吸収糸(強湾)にて洞粘膜と洞側壁を縫合
③特大な穿孔
(直径12mm<)
挙上した洞粘膜の天井を直骨ブロック(腸骨など)などにて再建