インプラント手術の重大事故を起こさないために 〜手術前準備〜
プログラム
- 患者の術前処置
- 手術環境整備
- 清潔域の手術準備
- 生体監視モニターの装置
- 麻酔科医の介助
- 患者体位の調整
・患者の術前処置
手術前確認が重要
・現病歴・既往歴
・アレルギーの有無
・喫煙歴
・禁酒歴
・身長、体重
・術前血液検査
・ルートシャントの有無と部位:シャント側での採血、血圧測定は禁忌
・腋下リンパ節郭清を行っているか:郭清を行った側ではルートキープ、血圧測定は行わない。
・静脈瘤の有無、末梢循環の状態
:深部静脈瘤血栓症はほとんどが下肢に生じる。肺血栓塞栓症を起こさないように注意する。
深部静脈血栓症が生じている場合には、弾性ストッキングまたは間欠的空気圧迫法を行うとその血栓が遊離するリスクがある。
深部静脈血栓症の臨床症状
・疼痛 ・腫脹 ・発赤 ・熱感
・ホーマンズ徴候(下腿三頭筋に痛みが出れば陽性)
深部静脈血栓症のリスク患者
・肥満
・喫煙
・経口避妊薬としての低用量ピルの使用。
・月経困難症治療薬としての低用量エストロゲン・プロゲスチン配合
薬の使用。
*薬剤を使用していない一般女性に比べて2~6倍
・皮膚の状態:皮膚の弱さ、あざの出来やすさ。
*糖尿病や腎透析、ステロイドの長期投与などの既往歴があると皮膚が脆弱になっている場合が多く、特に皮膚状態への注意が必要。
対応策としてサージカルテープの弱接着を用意しておく。
・関節可動域、運動障害、知覚障害の有無
・排尿の頻度。
術中の排泄対策に紙おむつを着用する。
内服薬での対応も要検討。ベタニス50mg
・コンシェルジュが前日に手術患者へ連絡をする。
確認事項:体調
:当日の来院時間
:禁飲食の確認
:麻酔試行上の注意事項を記載した書類を読んできていただく。
:コンタクトレンズ使用者にはレンズケースを持参いただくが眼鏡で来院されるように伝える。
:質問を聞く。
口腔内洗浄・消毒
プラークの除去
:清掃剤の基剤が異物として手術部位に混入し感染症を起こさせない
ために清掃剤の使用は禁止し、ソニックブラシや超音波スケーラー
で水洗浄する。埋入部位の隣在歯は徹底的に洗浄する。
口腔内消毒
:塩化ベンゼトニュウムで
歯牙ー歯肉ー口腔底、口腔前庭、粘膜ー硬口蓋ー舌背ー患者に含嗽
(30秒2回)全体に馴染ませ、術部を舌で擦過する。
患者の服装について
・胸元の開いたもの
・腕に圧迫がないもの
・汚れてもよい服
・患者体位の調整
患者の体位決め
・背盤の上縁と肩のラインを合わせる。
・ヘッドレストは軟性のもので滑らないように固定する。
・皮膚に硬いものが直接当たっていないか。
・固定具による神経や皮膚の圧迫や牽引がないか。
・点滴ルートは牽引、抜去しないように位置を確認する。
・血流の阻害はないか。
・器具や術者、介助者が患者の体を圧迫していないか。
・生体監視モニターの装置
血圧測定
・上腕動脈の拍動が最もよく触れる位置に指示マークがくるようにカフをまく。かふを巻いた時のきつさは、指1~2本入る程度が適当。
動脈血酸素飽和度測定
・指側の発光部が爪の根元に当たるように装着する。
動脈血酸素飽和度測定 注意事項
・カフを巻いた腕側では計測しない。
・濃いマニキュアが塗布されていると正しく測定ができないため、事前に
除去をお願いする。最低2本。
・緊急の場合は指を縦にして測定する。
動脈血酸素飽和度測定 問題点
・酸素化されている状態では換気の遅延指標になることがある。
呼吸停止から酸素濃度低下数値が反映されるまでにさらに1~2分要する。
・酸素投与下ではSpO2の反応は緩慢である。